初めての青色申告に向けて会計ソフトを開き、気合いを入れて1月分の記帳を始めた時のことです。
画面を見ると、「事業主貸」という見慣れない勘定科目がずらっと並んでいました。
原因は、配達用の備品を買うために連携した私用のJCBカードでした。スーパーでの日用品の買い物から、動画サブスクの月額、週末の出前まで、すべての明細が帳簿に流れ込んでいたんです。
そもそも私用のカードで払った経費は、経費として認められるのか。不安になって調べ始めて、想像していたのとまったく逆の結論に行き着きました。
結論:私用のカードで払っても経費にできる
先に答えを書きます。
私用のクレジットカードで支払った事業の経費は、そのまま経費にできます。 事業用のカードで払わなければならない、というルールはありません。
経費かどうかを決めるのは「どの財布から払ったか」ではなく「何のために使ったか」です。
配達用のスマホホルダーを私用のカードで買っても、それは事業のための支出なので経費です。逆に、事業用のカードで自分の夕食を買っても経費にはなりません。
支払い手段は関係ない。ここを最初に押さえておくと、この先の話が全部つながります。
仕訳は「経費科目 / 事業主借」の1行だけ
私用のカードで3,000円のスマホホルダーを買った場合、帳簿にはこう書きます。
| 日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 3/12 | 消耗品費 | 3,000 | 事業主借 | 3,000 |
事業主借(じぎょうぬしかり)は、自分の財布から事業にお金を入れたという意味の科目です。事業から見れば、自分から借りた形になる。だから「借」です。
事業主貸と事業主借の見分け方
主語は常に事業の側にあります。ここを取り違えると、2つの科目がずっと混乱します。
- 事業主借 … 自分 → 事業。私費で立て替えた、元手を入れた
- 事業主貸 … 事業 → 自分。生活費を引き出した、事業のお金で私物を買った
そして重要なのが、引き落とし日には何も記帳しないという点です。 引き落とされるのは自分の私用口座であって、事業のお金は1円も動いていないからです。
利用日に1行書いて、それで終わりです。
意外なことに、事業用カードのほうが仕訳は多い
ここが、あまり書かれていない部分です。
事業用のカードで同じものを買うと、仕訳は2回必要になります。カードは後払いなので、買った時点では代金を払っておらず、負債(未払金)が立つからです。
| 利用日 | 引落日 | |
|---|---|---|
| 私用カード | 消耗品費 3,000 / 事業主借 3,000 | 記帳なし |
| 事業用カード | 消耗品費 3,000 / 未払金 3,000 | 未払金 3,000 / 普通預金 3,000 |
私用カードは1行、事業用カードは2行。事業用にしたほうが手間が増えます。
ただし、これは手で書いた場合の話です。会計ソフトにカードを連携すれば2段階の仕訳は自動で作られるので、実務上の差はほとんどありません。事業用カードにすると仕訳が複雑になるから避けよう、という判断はしなくて大丈夫です。
年をまたぐ場合
12月に使って1月に引き落とされた分は、どちらの方法でも12月の経費になります。
カード払いは利用日で計上するのが原則だからです。引き落とし日で考えないでください。
私用のカードを会計ソフトに連携すべきか
ここからが実務の分かれ目です。
会計ソフトはカードを連携すると明細を自動で取り込んでくれます。便利なのですが、私用のカードを事業用の口座として登録すると、私的な買い物まで全部流れ込んできます。
そして事業用として登録した以上、帳簿上の残高は現実の残高と一致していなければなりません。だから私的な決済も記帳を飛ばせず、経費にはできないので事業主貸で処理することになります。コンビニも、サブスクも、家族との外食も、1件ずつです。
実際に会計ソフトの画面で、コンビニで買ったお茶や日用品が事業主貸として自動仕訳プレビューに出てきた瞬間、血の気が引きました。
試しに私的利用の件数を数えてみたら、1ヶ月だけで40件近くありました。 これを12ヶ月分やるのかと気づいた時は絶望しました。
判断基準はシンプルです
そのカードでの事業の支払いが月に数件しかないなら、連携しない。
会計ソフト側でプライベート資金として扱うか、そもそも登録しません。事業の支払いだけを「経費科目/事業主借」で手入力します。数件なら5分で終わります。
そのカードを事業の支払いに常用しているなら、事業用として連携する。
私的な行は出ますが、会計ソフトの一括登録機能などを使ってまとめて事業主貸を当てられます。
自分は連携しないことにしました
デリバリー用のスマホホルダーや、出張サービス用の消耗品などを買うことはありますが、月に数件程度だからです。
大量のプライベートな買い物を事業主貸で処理する手間に比べれば、数件の経費を事業主借で手入力するほうが圧倒的に早く、精神的にもラクでした。
逆に、事業用のカードで私用の買い物をしてしまったら
こちらは事業主貸です。
| 日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 8/22 | 事業主貸 | 1,000 | 未払金(カード) | 1,000 |
経費にはできませんが、記帳自体は必要です。事業用の口座から出ていったお金である以上、記録しないと残高が合わなくなるからです。
なお、この行に消費税の区分は付きません。事業の費用ではないので対象外になります。
領収書やレシートはどうするか
私用のカードで払った場合でも、レシートや領収書は保存が必要です。
カードの利用明細だけでは足りないケースがあります。 明細には店名と金額しか載らず、何を買ったかがわからないからです。家電量販店で3,000円、では事業の支出であることを説明できません。
保存期間は、青色申告の場合で原則7年です(書類の種類や所得金額によって5年のものもあります)。私用カードのレシートを事業のぶんだけ抜き出して保管する習慣を、早めに作っておくほうが後で楽になります。
自分がやっている保管方法
私用の買い物と事業の経費が混ざらないよう、100円ショップで買ったジャバラ式のファイルに、月ごとの経費レシート用のポケットを作って保管しています。
稼働中に買った経費のレシートは、帰宅したらすぐにスマホでスキャンして会計ソフトにアップロードし、原本はファイルへ。このルーティンを作ってから、月末の処理が劇的に楽になりました。
では、事業用のカードは作るべきか
経費にできるかどうかという意味では、作らなくても困りません。ここまで見てきたとおり、私用カードと事業主借で問題なく処理できます。
作る意味があるのは、記帳の手間を減らしたい場合です。事業の支払いが月に何十件もあるなら、専用カードにして自動連携したほうが確実に速い。逆に月に数件なら、手入力のほうが速いことすらあります。
判断の分かれ目は「経費にできるか」ではなく「件数」です。
なお、高額な備品を買う場合は、支払い手段より購入した年の処理のほうが影響が大きくなります。自転車のような資産の扱いについては、配達用の自転車は経費になる。ただし「いつ買ったか」で金額がまったく変わるで詳しく書いています。
まとめ
- 私用のカードで払った事業の経費は、そのまま経費にできる
- 仕訳は「経費科目 / 事業主借」の1行。引き落とし日は記帳しない
- 事業用カードのほうがむしろ仕訳は多い(利用日と引落日の2段階)
- 私用カードを会計ソフトに連携すると、私的決済が全部事業主貸になる
- 事業の支払いが月に数件なら、連携せず手入力のほうが速い
- レシートは私用カードでも保存が必要。カード明細だけでは足りないことがある
この記事は個人事業主として実際に記帳した経験をもとに書いています。勘定科目の当てはめには複数の考え方があり、判断に迷う場合は所轄の税務署か税理士にご確認ください。税理士ではないため、個別の税務相談にはお答えできません。
次回は、事業用の口座とカードを分けるべきかについて書く予定です。


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